八戸のメドツ 沈む祈り、浮かぶ影

オカルト
オカルト

さて、今宵もまた怪談を聞きに来たようだね。特別に話しをしようじゃないか。ただし、途中で怖くなっても知らないぞ?「怖い話なんて慣れてる?」ふふ、それは頼もしい限りだ。じゃあ、沈む準備はいいか?

舞台は青森県の八戸の海沿い、メドツの地。おや、知らない?それはそれは、罪だな。だが安心してくれよ、今から教えようじゃないか。メドツとは、昔々、海の守り神を起った神聖な場所だった。漁師たちはそこに手を合わせ、荒波を鎮め、豊漁を願ったという。だが、時が流れ、人は信仰よりも便利さを選び、メドツは忘れ去られた。

[まぁ、人間なんてそんなもんよね。神様よりスマホ、祈りより金。で、メドツはどうなったかって? そりゃあ、すねちゃったのよ。『私のこと忘れたの? じゃあ……思い出させてあげる』ってね」

「メドツは伝承によるとカッパのうような存在らしいですね。」

奇妙なことに、ここでは「沈んだはずの声」が聞こえるらしい。夜更け、潮騒に紛れて、誰かが踊く。「帰れ」とか「まだ沈みたくない」とか。まったく、海に沈むのはタ陽だけにしてほしいものだ。そして、ふと気がつく。波の間に、何かが浮かんでいる。ゴミ?いや、違う。目を凝らせば、そこには白い顔、黒い髪。まってくれ、冗談じゃない、さっさと目を逸らせー一そう思った瞬間、視線が絡む。

「そこに手”が伸びてくるんです」

「あ一あ、アウトね。それもう、完全に“お 持ち帰り”コースじゃない」

おっと、ここで終わりにしよう。これ以上話すと、自分まで呼ばれてしまう。

「決して、波間の影と目を合わせないこと」

「もし見ちゃったら? そりゃ、後ろを振り向かないことね。なんでって? だって、振り向いた人は……誰も帰ってこなかったんだから」

真実はどうだかわからないのだがね・・・

タイトルとURLをコピーしました